奨学生コミュニティ
第一号奨学生と代表理事との対談
篠原財団ハーバードMBA奨学金 第1号奨学生、梶浦礼加さんと当財団の代表理事、篠原よしみとの対談です。
日本に貢献するために海外でチャレンジしたいという思いやハーバード・ビジネス・スクールでの学びに対する期待など、梶浦さんの熱い思いが語られています。
MBA取得にチャレンジしたいと思っている人はぜひご覧ください。
- こんにちは。篠原財団代表理事の篠原よしみです。
篠原財団は、昨年2023年にハーバード大学経営大学院MBAプログラム、英語ではHarvard Business Schoolといいますが、こちらにおいて日本人学生向けの奨学金ファンドを設立いたしました。
本日は、その奨学生第一号 梶浦礼加さんをお招きしてお話を伺います。
梶浦さん、よろしくお願いいたします。
- よろしくお願いいたします。
- まず、簡単な自己紹介をお願いします。
- 私は梶浦礼加と申します。2023年の8月からHBSに1年生として入学している者です。
大学は東京大学で、経済学部を卒業した後に、J.P.モルガンという投資銀行で2年間勤め、その後ブラックストーンというプライベート・エクイティの業界で4年半勤めました。
金融畑を歩いてきた人間ではあるんですけれども、その後、少し自分のキャリアであるとか、社会に対する向き合い方を含めて、海外の文脈でチャレンジしてみたいなっていうところがあったので、それを大きな動機として、今、ハーバードビジネススクールに1年生として在学しています。
- そうですか。すごく壮大な、夢というか動機ですね。具体的に、ゴールとかあるんでしょうか?もしあったら、お話してください。
- そうですね。はい、もちろんです。
6年間金融で投資のお仕事に関わり、その過程において、日本企業の財務諸表をいろんな業界に渡って分析する機会が結構あったんですね。
そうなると日本の企業が抱えている一番の問題っていうのは、やっぱりトップライン、売上高をどう今後拡大させていくかというところで、日本国内、少子化でGDPの歳出とかもどんどんシュリンクしていく中、日本の企業が日本の企業として生き残るためには、日本の外で何が起きているかって事をよく理解して…
日本の外におけるビジネスの重要性が増しているなっていうのをすごく感じる機会がありまして、まず当然日本人ですし、いずれは日本の経済とか社会に貢献したいなと思っているんです。
でも最終的にそこに行くためにはやっぱり自分が、日本の外のビジネス、アメリカ人が、ヨーロッパ人が他のアジアの人たちがどういう風な言語でどういう風なビジネスのやり方をしているのかを知らないと、日本企業に貢献できないかなという思いが結構あったので、それが一番大きな動機ですね。
- 壮大な動機、ゴールを持っていらして、ですが、おそらく留学を考えてから実際に来るまでいろいろ障害はあったかと思います。
日本の社会の実態なども踏まえて、どんな障害があったか、お話いただけますか?
- そうですね。やっぱり一番大きな障害としては、これ皆そうだと思うんですけれども、自分の仕事と受験勉強、その時間の両立はそれなりに結構大変ではありましたね。
もともと労働時間も長い業界ではあったので、そういう意味では例えば、上司のサポートとか同僚のサポートっていうところの理解が薄いとなかなか…。
今の会社を辞めて行くっていう決断になってしまうので、そういう意味では、まず自分がチームの中でやっている仕事があった時に、
“何故それを置いてまでビジネススクールに行くのか”という理解を得るために上司を説得することが、まず1つ大きな壁だったと思います。
- 他の学生さんから聞いたことがあるのですけれど、(企業派遣でMBAを目指す場合)未だに男女の機会があまり平等でないこともあるようですが、その辺りはどうでしょう?
- もともと働いていた職場とかでも女性の比率はすごい少なかったので、そういうお話、そもそも女性のアプライする人たちの数がすごい少ないので、なかなかそういう話をする機会っていうのがアプリケーション期間中には確かに無かったんですけど、ハーバードビジネススクールに合格した後に、他のビジネススクールに合格した女性たちと交流する機会に皆が一貫して言っていたのが、
「チーム内で男性と女性が同じようにビジネススクールに行きたいと、そういうチャンスがあってアプライした時に、やっぱり男性の方がプログラムに選ばれる確立が高い」と。
なぜなら会社としてMBAに行かせるってことはすごい多額の投資なので、会社側の視点としてもその会社に戻って来た後に長期的にコミットしてくれる人というのを探していて、
そうすると女性としてのキャリア、例えば妊娠出産とか子育てとかを考えた時に男性に投資した方がそのリターンがいいんじゃないか…、
そういう考え方は一部の業界ではあると聞いたことは私もあります。
- はい。ありがとうございます。
そういう障害も越えて実際に学生生活が始まったということですが、想像していなかったような驚き、良いことも悪いことも含めて、皆さんにちょっと共有していただけますか?
- 基本的には良いことの方がすごく多いのですけど、元々私は全然海外のバックグラウンドが全くなかったので、自分の英語っていうところが結構すごい不安で、しかも、そもそも特にハーバードビジネススクールだと全ての授業がディスカッションベースで行われて、
全然レクチャー方式じゃなくて、基本的には教授がすごいオープンクエスチョン、例えばこの会社のリーダーはこれをすべきでしょうか?Yes or No?みたいに質問。
それに対して皆が手を挙げて、YesならYes、NoならNo、ポジションをはっきり取って、それについて自分の考えを述べないといけない。そういうフォーマットってほんと私にとっては完全に新しくて、それに自分が順応できるかすごい不安だったんです。
でもそのクラスの中で60%くらいがアメリカ人で、40%くらいがインターナショナルの留学生なんですけど、アメリカ人の人たちがすごいインクルーシブで、私が発言するとどれだけ詰まってもすごく頷きながら最初の頃は聞いてくれるし、授業が終わった後とかに私のところに近寄ってきて「すごい良かったよ」とか、「こういうポイントがそうmake senseだった」、もしくは「これはちょっとなんか違ったね」みたいな。
確かにいい意味でも悪い意味でもすごいフィードバックをくれるので、そういう意味ではセクションのクラスメイトにすごく助けられているなって感じがしました。クラスメイトがもっと、もっとコンペティティブなイメージ、競争が激しいイメージが結構行く前はあったんですけど、すごい皆フレンドリーで、それはいい意味でのサプライズだったかなと思いますね。
あとは、やっぱりHBSのリソースの豊富さってのがすごくあって、世の中の名の知れた人とかっていうのがそのクラスルームに来て、いろいろ話をしてくれるっていうところがすごいあります。
この間も短期集中講座でメルセデスF1チームのプリンシパルを務められているトト・ウォルフさんとかが本当にクラスに来て、3日間、1つのオーガニゼーション、1つの組織として、そのスポーツチームをマネージするってことはどういうことか、エンジニアとの関係性、ドライバーのマネジメント、あとステークホルダー、株主とかのマネジメント。
そのいろんなステークホルダーをどう、こうマネージしていくかみたいな、そういう話を結構してくださいました。
実際のビジネスの最前線で活躍されている方から直接いろんな話を聞けるし、なんならこっちからも質問をどんどんしていいみたいな、そういうところ、そういう機会ってなかなか日本じゃ得られないので、それはすごい嬉しいなと思いました。
- あとネガティブな面は?
- ネガティブサイドを考えると、プレッシャーはすごい毎日ありますね。
日本だと自分の第一言語で、文化的な、いろんな非言語コミュニケーションも含めていろいろできる中で、こっちだと常に自分が何者で、自分がこのクラスで何をデリバーできて、自分が何者かっていうのを常にプルーヴし続けないといけない感覚。
毎日本当たくさんの人に会うので、ビジネススクールだけじゃなくてクラスメイト、クラスの外にいる人、機会はたくさんあるんですけど、その機会をちゃんと自分のものにするためには、授業以外のところで、ネットワーキングもそうですし、ソーシャルに顔を出すとか、
あとやっぱり自分が誰で何故日本から来たのか、で、何がしたいのかというところを常に問われ続けるんでそれをプルーヴし続ける。
ずっとトレッドミル*の上を走っているような感覚はすごいあるので、それは結構しんどさ、いいしんどさなんですけど、プレッシャーに感じる時はたまにあります。
(*treadmill:ランニングマシン)
- 日本にいるとあんまり自分でも考えないようなこと、自分が本当に誰で、何がしたいのか、何で行くのかっていうことを常に毎日こう問われる感じが…、ってことはぼーと生きているよりもすごく充実して(笑)。
厳しいかもしれないけど、すごい濃い、生活を送られているってことですね。
- 確かに。
間違いなくそうですね。
- 最後に、今現在、HBSに挑戦しようと考えていらっしゃる人、またはHBSでなくても他の海外の大学のMBAを検討している方々に何かメッセージ、アドバイスをいただけるとしたら、何でしょうか?
- そうですね。私もMBAに行こうって思ったことは、前半壮大な目標を最初に語らせていただきましたけれど、あれが全て100%、それしかないかって言われるとそういうわけではなくて、もっと気軽な気持ちで…。
日本って島国で、ランゲージバリアもそもそもあるので、日本の外に誰がいて、何が起こっているのかって結構無頓着に生きてたなって感じがすごい私はするんですね。
例えばイラクで何かが起ころうが、イスラエルで何かが起ころうが、正直日本で生きていた時の自分って他人事だったんですが、それが一番ビジネススクールに来てからすごく思うのは、全世界中に友達ができるので、日本の外で起こったニュースを聞くと友達の顔が浮かぶし、それからより自分事として捉えられるようになった。
1つの世界の解像度っていうものが上がるっていうそういう経験になると思うので。
確かにランゲージバリアとか、あと当然、仕事との両立であるとか、金銭的問題とか、たぶんいろいろビジネススクールにアプライすることを妨げる要因って日常生活にすごく見つけやすいんですけど、でも本当に自分が行きたいと思う、自分が本当に少しでも興味があるのであれば、それは全て解決しうる問題なので、ちょっと大学のホームページとかものぞいてみれば、必ずそれぞれにアドレスする何かしらの救済策みたいなものは用意されているはずです。
ぜひ少しでも興味があるのであればあまり恐れずにとりあえずまずスコアメイクから始めてみることをおすすめします。
- そうですね。
世界中に友達ができる。そして、世界で起こっていることがただの単にニュースではなくて、本当に身近に感じることができる。素晴らしいですよね。
- そうですね。
- どんなことにもソリューションはあるはずなので、まずはスコア作りから、まずはトライしてみるってことですよね。
- トライしてみる。
- ほんとNothing to lose!ですよね。
- はい、本当にそうだと思います。
- 今日は本当に貴重なお話を梶浦礼加さん、どうもありがとうございました。
- ありがとうございました。